鑿鍛冶の独り言履歴08年分

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鑿鍛冶の独り言履歴 07年度

鍛冶屋の独り言履歴08年1月〜

鍛冶屋の独り言履歴09年1月〜

鍛冶屋の独り言履歴10年1月〜

*角打追入11本
*大突 8分、寸6 2本組鑿
*向待と平待
鉋仕込み用鑿・各種
*ダメ切型鑿

*私が名付け親七分首追入鑿
*江戸独楽職人バンザイ
*私が名付け親
香の突
*三條クラフトフェア
*二段鏝鑿と逆鏝鑿



その8私が名付け親二段鏝鑿と逆鏝鑿08.12.1


客さん(問屋、小売店)より、
こんな名前の鑿を聞いた事がないとよく言われます。

その通りで、これも私が付けた品名です。

逆鏝鑿は
約10年ぐらい前に京都の展示会で鏝鑿の裏が逆の物を
作って欲しいと言われ、作りました。
用途は、床を張る時などに柱の所の切込みが
きつい場合、柱の下の方を削り調整出来るそうです。
柄に頭桂が付いていますので、叩く事が出来ます。

その次の年の展示会で、あの鑿が良かったからと
「私が前からこんな形の鑿があったら良いなと思っていた」と
針金を曲げて「この鏝の形と高さで」と持ってこられました。
そして出来たのがこの二段鏝です。
用途はフロアなどをする時、柱の脇の鑿の柄が下地に当たらぬように出来て
削る事ができます。しかしこの鑿は使い勝手により左右が必要です。


逆鏝鑿




二段鏝鑿






番外編三条クラフトフェアin八木ヶ鼻08.11.2


10月11日・12日に三条市下田八木ヶ鼻オートキャンプ場にて
三条市では初めてのクラフト展が有りました。

三条市といっても三条燕インターよりより30〜40分ぐらい福島寄りですが
北は北海道から南は兵庫県まで、85の出展者があり、
陶芸・木工・ガラス細工など、色々な作家さんたちが来られていました。


11日はあいにくの雨で人もまばらでしたが(蚊やブトはやたら多かった)
12日は晴天に恵まれ多くの人より来て頂きました。
そこで食品を売っていた方は、お昼過ぎには完売していました。
(10時開店なのに・・・)

私達は鍛冶屋の実演をし、切り出しや彫刻刃物の制作をしていました。
来年も是非第二回をしたいと、皆さん言っておられました。

実行委員の皆さん大変お疲れ様でした。そして、有難うございました。





私です。刃付けと鑢かけの実演中




息子です。火作りの実演中


全国よりいろいろな作家の方が来られました。
(全体写真が無くてすみません)







その7私が名付け親香の突08.10.5

客さん(問屋、小売店)より、
こんな名前の鑿を聞いた事がないとよく言われます。

その通りで、これも私が付けた品名です。

一般では穴屋、丸太入母屋、中突深穴鑿などと言われております。
私がある社寺建築の大工さんより注文を頂いたとき
巾2寸5分、刃5寸、首6寸、柄8寸・・・
こんな長い叩き鑿がどの様な所に使われるのかと思い、
仕上がった品物を用途を見せて頂きたいと言ったら、
尺5の角材の抜き穴を突いて見せて下さいました。

その時の印象が非常に強かったので「香の突」と名付けた次第です。

サイズはいろいろありますが、
昭和
55年頃より私共の製品名として使ってきております






番外編江戸独楽職人バンザイ





9月6日に新潟市で趣味として江戸独楽を作っていた平林さんが
この度自宅の隣に工房を開き、プロとして独立されました。
その工房のお披露目と「木地玩具 ひらばやし」の看板掲揚に
私と息子で行ってきました。

私共と江戸独楽の方々とのお付き合いは、
その作業で使う「かんな棒・溝引き・バンカキなど」の
木工バイトを作らさせて頂いており
もう20年ぐらい作らさせて頂いております。


この「木地玩具 ひらばやし」の2階には、
平林さんが今まで集められた
全国のこけし・玩具と師匠とそのお兄さんの独楽の数々が
飾られており、それを見るだけでも一見の価値があります。
そして、1階には作業スペースと多目的フロアーがあり、
平林さんは大体(イベントなどが無ければ)
そこで作業されています。


この平林さんの夢の結晶をお近くに来る
機会が有りましたら是非お立ち寄り下さい



お問い合わせ
〒951-8141      
新潟県新潟市中央区関新3-3-16
(JR越後線 関屋駅より徒歩数分)

木地玩具 ひらばやし
平林正志
025-267-0457



外観です





二階の展示室


師匠の広井政昭先生


その場所で早速、試し削り
先生と生地玩具ひらばやし館長平林さんの師弟






その6私が名付け親七分首追入鑿08.8.4

この鑿は、シキイ・カモイなどの取り付などに使用する際
(足場の上での仕事などの時)新品の鑿だと少し長く
使い勝手が悪いので何か良い物が有りませんかと
お客さんに言われ、以前より有る短穂追入を見て頂いたら
(穂が8分位短い鑿)新品なのに始めから穂が短いし、
普通の追入れ鑿の価格と同じなのは、
なにか損をしているような気になると言われました。

それでは首の方を短く致しましょうかと言いましたら、
それも良いかもしれない、使うときにブレも少ないと思うと言われ、
平成二年より作り始めたところ、

現在では大工さん以外の木工、木芸家などいろいろな分野で使われております。
その時、私が「七分首追入れ鑿」と名付けました。

これ以前にはこの品名の鑿はありません。








その5ダメ切型鑿08.7.1


この鑿を船大工鑿、北海道鑿などと呼ぶ方がおられます。

船大工鑿は木製船を作るとき、
木と木の水漏れを防ぐために桧皮を入れる時に使った鑿で、
このところを「駄目」と言ったところから、
ダメ切の名が付いたと聞いております。

北海道鑿というのは、この鑿を作った工場が
北海道にあったからだと思います。

この鑿は全鋼の鍛造品で作っており、
刃先が薄く、首の元が太く、クサビ形に出来ており、
一般大工仕事にも非常に使いやすいのですが、
全鋼で刃が付きにくいので、
この形で鋼付けにしたら尚
良いのではと
問屋さんより話を持ちかけられて作り始めたと、

私の親方であります、栄としが言っておりました。

私が独立した頃も春になると、東北の大工訓練校で使うのだと、
問屋さんより各サイズ数十本の注文が入ってきたものでした。

最近では、喰いつきが良く使いやすいと、この鑿の利点を
知る方々よりの注文で作らせて頂いております。





ダメ型追入10本組



角打ちと面取り






その4鉋仕込み用鑿・各種08.5.8


最近、自分で鉋台を仕込みたいのでどんな鑿がいるのか
という問い合わせがありますが、今までに鉋台屋さん用の
注文で作った鑿を紹介します。

スミ付の後、まず、口切用は追入鑿でも良いと思います。
次に、荒い穴を掘る叩き鑿、表が当たる部分に使う鎬突、
押し溝用の向待、包口用のコテ鑿、刃口の仕上げに使う突き鑿などで、
使う職人によりサイズ、肉厚、形状が多少違っていました。

近年(5、6年前より)は海外でも自分で
台入れをしてみたいという人のために、
私の知人の鉋台屋さんが、アメリカやドイツなどで
毎年実演やセミナーが開かれ、多くの受講者がスミ付から始まり、
最後に自分で仕込んだ鉋で薄削会をして、大変に好評だと聞いております。

写真の製品もその時の受講者用にと、毎回数セットを製作しております。



各種


口切用(追入鑿でも良い)


荒い穴を掘る叩き鑿


表が当たる部分に使う鎬突鑿


押し溝用の向待



刃口の仕上げに使う突き鑿





その3向待と平待08.4.1

向待・・・建具屋鑿というひともおられます。
主に建具のホゾ穴を掘る時に使われていましたが、
木工機械の発展と共に現在では使われなくなり、
それに伴い、この鑿を専門に作っていた鑿鍛冶も
無くなりました。他に木工の椅子やテーブルなどでも
使われ、二本のホゾ穴を同時に出来る
二丁向待
(
又のみ)という物もあります。
向待は肉厚で、表の巾と裏の巾が同じで
あける穴がぶれない様に作られています。

平待・・・これも建具屋さん、家具、細工の仕上げ用に
使われ、向待とは違い薄く出来ていて最後の
いま一切の仕上時に使われているようです。

これらの鑿の特徴として、柄に入る鑿の頭(マチ際)の部分が、
一般鑿と違い丸首ではなく角首なっております。

これは、叩いたり押して切る時に刃先に真っ直ぐに力を
伝えるべく反りも無い様に作られております。

これらの鑿は、日本では使う職人さんが少なくなりましたが、
最近アメリカなど海外で家具などを作る木工の職人さんよりの
注文が増えてきていると聞いておりますが
何故なんでしょうか?


向待鑿



平待鑿



その2 大突 8分、寸6 2本組鑿 08.3.1

この大突(本突とも言う)20年位前に問屋さんより
注文を頂いた復元品です。
鑿の肉取りは注文を頂いた時、「大突は重さが必要だ」と言われ、
先荷になる様に、穂は一般より厚く仕上っております。
理由はよく分かりませんが、
(今にして思えば、良く聞いておけば良かった。)
鑿を持った時、刃先の方が重いと上から突き切る
時に力が入るのではと思います。
薄向きの大突ですと、さらいなら良いと思いますが、
堅い木材や深い穴を突き切る時に刃が木に喰い付かず
「跳ね返ってくるようだ」と言われた大工さんの話も聞きましたが・・・
私は鍛冶屋で刃物を作るのは専門ですが、使う方より
何かコメントを頂けたら幸いです。

寸法と肉取ですが、                        
穂の厚さ・・・・先4分元5分 
首の頭の太さ(口金の当たる所)・・・7分
刃角度30度
長さ・・・1尺丈(刃4寸2分・首5寸8分)
柄1尺3寸紫檀柄



桐箱入れとなっています








作品その1角打追入11本08.2.3)

追入鑿の呼び方は新潟地方では昔、奴のみと呼んでおりましたが、
地方により「大入のみ」「押入のみ」「仕付のみ」などと呼ばれております。

この鑿の寸法と形状は私が年期明けの昭和33年頃、
親方より教えて頂いた形で、穂の部分は1寸8分5厘
首は1寸4分5厘で総丈3寸3分です。

そして、コバの部分は少し表面の方に少しコロバシ、
肩の形は、1升ビンの口下の様になで肩に作る。
首の鎬は、鎬が立って見えるようにヤスリをひねりながらかける。
鑿の基本はささりやすくて抜けやすいように作れとも言っておられました。
これが、「初代よし栄」から伝わる私達の流儀だと親方より聞いております。

系図を参照

現在この流れを伝えてるのは
三代目よし栄二代目栄とし・そして私達親子です。


三条 山田よし栄系図


訂正  二代目 越彦は高木彦八郎ではなく高木倉八郎です



5厘より寸4までです。


寸2・寸4は面取です。



5厘・1分は深めにサワが入っています。



この鑿の桂は、口桂・頭桂共に田齋特製です。